2015年10月28日水曜日

不良債権処理

2000年代前半、小泉政権によって進められた不良債権改革の論点を整理。出典は、竹中平蔵「構造改革の真実」


バブル経済崩壊以降、日本経済低迷の大きな原因として「不良債権問題」が指摘されていた。銀行セクターに不良債権がたまると、銀行が企業への貸付を控える「貸し渋り」や健全な企業から債務を早期回収する「貸し剥がし」の問題が発生する。
また過剰借り入れをしている企業も投資をしづらくなる。さらに銀行の健全性が損なわれると、決済システムに問題が生じる。このように不良債権問題が経済全体の停滞を引き起こすことは、昔から「デット・オーバーハング」と呼ばれ、専門家の間で議論されていた。

それにもかかわらず、日本では不良債権改革は長らく先送りにされてきた。背景には、護送船団方式による非競争的な銀行経営、債務を抱える企業による改革忌避と政治家への圧力、官僚の無謬性などがいわている。日本経済浮揚のために必要不可欠な改革であるにもかかわらず、長年放置されていた。

小泉政権が発足してから、不良債権処理の動きが加速した。とりわけ先鞭を取ったのが竹中平蔵元金融相。この問題の重要性を政府内外に周知し、改革を主導。改革のデザイン、詳細を官僚に任せるのではなく、民間議員を活用しながらトップダウン型の改革案を設計・実施。

不良債権改革の三本柱は
(1)不良債権の厳格な審査
・大口債務者の資産査定厳格化(DCF法の採用など)。
・大口債権者の債権者区分統一。
・不良資産公表による銀行へのプレッシャーと自己査定の強化。

(2)公的資金注入
・預金保険法に基づく注入。
・自己資本比率4%を割り込んだりそな銀行に対する1号注入と、自己資本比率がマイナスになった足利銀行に対する3号注入。

(3)銀行ガバナンスの強化
・コーポレート・ガバナンスの強化。
・経営健全化計画未達成の銀行に対する業務改善命令

そして銀行側の改革だけでなく、産業再生機構を通じた企業側の改革も実施し、コインの裏表ともに健全化の道筋をつけた。

結果、ピーク時に8.4%だった主要行の不良債権比率が、2006年3月期には1.9%に改善した。


【考察】
不良債権問題の解決方法として王道が記載。
他方で、実際の改革の際、実務的に銀行がどのように不良債権を処理していったのかがわからない。本書では、債権整理機構(RCC)による不良債権買取は銀行への補助金のようなものだと批判しているが、実際問題、具体的にどのようプロセスを経て銀行が不良債権を減らせたのか。銀行は厳格に処理をしていかなければならない以上、やはり貸し渋り、貸し剥がしは生じてしまったのではないか。


2015年10月17日土曜日

公共財政管理について

あらゆる公共政策に関係するものの一つとして、「財政」が挙げられる。いつ、どこで、どのような公共政策を実施するとしても、例外なくお金が必要となる。道路や発電所といったインフラ事業はもちろんのこと、教育であれ、保健であれ、社会保障であれ、予算がなければ事業は実施できない。仮に民間企業の活力を存分に活用した結果、公共政策の実施の際に特定の支出がかからなかったとしても、そのための企画・調整にあたった職員の人件費は必要だし、やはりお金は関係する。公共政策とお金は切っても切り離せない関係である。

日本でも財政の議論自体は昔からなされている。緊縮財政、拡張財政といった大きな議論や、税制体系、国から地方への補助金なども、財政学の分野で長年にわたり議論が蓄積されてきた。しかしこれらの多くはいかに「制度」を変えるかといった点が中心であり、その制度をいかに「実施」していくかという視点でのアカデミックな議論は多くない。特に公的資金を行政機関がいかに管理するかという「公共財政管理」の議論は、海外では盛んに行われているものの、あまり日本ではなされていない。日本はこれほどの財政赤字大国になってしまったにもかかわらず、財政の議論は、不思議なほどマクロ的・制度的な内容に終始しており、公共経営的発想に基づく「公共財政管理」の重要性が語られることが極めて少ない。

このような問題意識のもと、本ブログでは、日本の公共財政管理の現状や、海外での公共財政管理の改革事例などを紹介する。また世界ではどのような形で公共財政管理の議論がなされているのかといった、公共財政管理論議の潮流も併せて紹介する。

古今東西 公共政策ブログ

このブログは公共政策に関するブログです。国、種類、時間を問わず、私が関心を持った公共政策について紹介していきます。ブログ執筆の目的は、あくまで自分の知識の整理、体系化なので、読み苦しい点も多々あるかもしれませんが、ご理解の上、お付き合いください。